初めての沢登り

 1.沢登りとは
  沢登りとは山の中にある渓谷(沢)を辿って山頂を目指す登山スタイルです。まだ登山道の無かった昔の人達は木が生い茂っておらず、飲み水など確保が容易な沢を遡って山に入りました。そこにはまだ人に荒らされていない手付かずの環境が残っており、自然の中にどっぷりと浸かる、今までの登山とは全く違う新たな世界を体験する事ができます。



 2.沢登りの魅力
  魅力があり過ぎてとても一言では言い表せませんが、私が強く思うのは自然と自分との真剣勝負です。沢には管理された登山道も道標もありません。目の前に現れる滝、巨石、淵、急流などの難所を自分たちの持っている経験、知識、技術、装備、あらゆるものを使って乗り越えて行いきます。時には独力で、時には仲間と協力しながら困難を乗り越え、無事ゴールに到達した時の喜びは普通に登山道を歩くだけでは得られないものがあります。

 更に沢登りでしか楽しめない事もたくさんあります。新緑や紅葉に包まれたせせらぎの美しさ、神々しいばかりの巨大な滝、うだるような暑さの中で飛び込む淵、キャンプ地で焚き火を囲んで仲間と語り合うひと時、山や川から頂く自然の恵みの美味しさ等など、数え上げればきりがありません。そしてそこには混雑や渋滞の登山道、すし詰めの山小屋、テン場の場所取り合戦もありません。

 また、沢登りをやっていると、滝登りなどの登攀力、泊り装備を背負って歩く歩行力、地図を使ってルートを的確に見定める読図力、キャンプ地で泊る生活力、およそ登山で必要とされるあらゆる技術が身につきます(雪山は除きます)。

 こんな良い事だらけの沢登りの世界、せっかく鈴ハイに入って体験しないのは勿体無い!あなたも一歩踏み出しませんか!
 3.沢登りに必要な装備
  沢登りは濡れる事を前提とした登山形態ですので、通常とは違った装備が必要です。また、道なき道を歩くので安全対策も重要です。ここでは沢をこれから始めようという人が経験者と一緒に初級の沢へ行く場合に必要な装備について説明します。

(1)履物
 沢登りには専用の履物があります。これは濡れた岩の上を歩く為でビブラムソールの登山靴では滑ってしまいます。幾つかの種類がありますので紹介します。

①渓流シューズ(沢靴)
 沢登り用に作られた靴。水抜きなどが考慮され、靴底はフェルト製とラバー製があります。ある程度強度があるため、つま先の保護に優れ長時間歩いても(比較的)疲れに難いです。価格が高い(1.1~1.6万円くらい)のが難点。

②渓流足袋
 ネオプレーンの生地の足袋の足底にフェルト(もしくはラバー)が張られているものです。全体的にやわらかいので長距離歩行や重い荷物を背負った泊り沢には不向きですが、足裏感覚がよく滝登りに適しているという意見もあります。これを愛用しているベテラン沢屋も多いです。
 価格が安く(6~9千円くらい)、続けるかどうか判らないのに沢靴買うのはちょっと・・という方にはいいですが、サイズの区分が粗く(S、M、L)、足に合わない場合があります。

③地下足袋&草鞋
 昔の人はこれで登ったそうですが、草鞋の入手は困難で現実的ではありませんのでここでは省略します。

④その他
 Moon starというメーカーの出しているジャガーシグマという体育館シューズがラバー製沢靴と同等のグリップ力があるという情報があります。当会のちっぷるちゃんはこの靴で普通に愛知川を歩いていました(私はまだ試していません)。価格が安い(4千円くらい)ので最初の1足にいいかも。ハイパーVという作業靴もよくグリップします。
 その他、運動靴の上に軍足を履くという方法もあります。キャニオニングツアーなどで見かけた事がありますが、通常の沢でどの位使えるのかは不明です。軍足はおそらく使い捨てです。


○ラバーかフェルトか
 
沢靴の靴底にはフェルト製とラバー製があり、それぞれに特徴があります。特徴を翼理解し、遡行スタイル(使用状況)に合ったものを選びましょう

<ラバー>
 コケのついていない岩なら乾いていようが濡れていようが抜群のグリップ力を発揮します。これを使ってからは登るのが上手くなったような錯覚を覚えます。ただし、滑ったコケの生えている岩は氷の上に立った時のようにツルっと滑ります。その為、岩の状況が見極められない初心者には不向きとされています。(登山用品店でもたいてい最初はフェルトを薦められます)
 しかし、寿命が長い(フェルトの1.5~2倍)、登攀能力が上がる、下山時に替え靴が不要というメリットは上記のデメリットを補ってなお余ります(コケを束子で磨くと言う技もあります)。履いてみない事には慣れませんので個人的には最初からラバーソールをお勧めします。

<フェルト>
 私も沢を始めてから8年くらいはフェルト派でした。濡れた岩、コケのついた岩、乾いた岩、草付きなど、どのような状況にもそこそこのグリップ力があり、フェルトで無ければという愛好家も多いです。しかし、あくまでもそこそこです。ラバーでは登れてもフェルトだと登れないという状況が多々ありますし、何より寿命が短いです。日帰り十数回でフェルトは磨耗してしまいますので、ヘビーユーザーにとっては経済的ではありません。私は4月くらいから新品の靴でスタートし、8月にはフェルトの張替え、11月のシーズンオフで廃棄というサイクルでした。


(2)衣類
 濡れるという事を想定して衣服を選びます。真夏でも濡れたままの服では寒くなりますので速乾性の化学繊維のものを選びます。綿素材はNGです。

①アンダーウエア
 一番重要な部分。山用の速乾性アンダーウエアを選びましょう。(普通の山でも使いますし)。性能的にはファイントラックのアクティブスキンがお勧めです。

②ウエア(上)
 速乾性の山用ウエアであれば基本なんでもOKですが、半袖はNG。素肌の露出が多いと怪我をする確率が高くなります。また、岩や木に擦れる事が多いので高価なウエアは後で泣きを見ることがありますので注意しましょう。お勧めはやはりファイントラックのフラッドラッシュです。これなら泳いだ後でも10分後にはもう乾いています。

③ウエア(下)
 これも速乾性の山用パンツ(ズボン)であれば何でも良いです。こちらも短パンなどで素肌を曝すのはNGです。たまに、短パン+CWXなどでみえる方もいますが、高級タイツに孔が開くと悲惨なのでやめましょう。 前述のフラッドラッシュに短パンというスタイルもあります。

④靴下
 綿でなければ何でもOK。沢足袋など親指が分かれている履物を使用する際は靴下も先割れの靴下にしないといけません。春先や秋の沢に行くときはネオプレーンソックスを履く事もあります。

⑤手袋
 基本、素手でもOKですが、沢では色んなところに手をついたり、木の枝を持ったりしますので保護のために手袋をした方が無難です。またロープ使う沢の場合には必須です。
最初は軍手でOK、私はホームセンターで売っている豚革手袋の指先を切って使っています。登山用品店で売られている沢用手袋はお財布に余裕があれば、で良いと思います。

⑥スパッツ
 ネオプレーン製の沢用スパッツです。足首から脹脛の保温と保護を兼ねます。盛夏には不要ですが、下半身の保温に効果がありますので長時間水に浸かる場合や、春や秋の水温が低い場合に準備した方が良いでしょう。

(3)登攀具関係
 沢には登山道がありません。滝を登ったり急斜面を高まきしたり、岩がゴロゴロの河原を歩いたり、危険がいっぱいです。その危険を回避する為に以下の装備が必要です。
(以下の装備は必要最低限です。状況に応じて必要な装備は変わります。)

①ヘルメット
 最近はアルプスでも被る事を勧められているのでポピュラーになりました。沢では必ず着装しましょう。工事用のヘルメットでもいいですが、どうせ山でも使うので山用のカッコいいものがいいでしょう。
(会装備がありますのでレンタル可です)

②ハーネス
 岩登りなど高所で行動する際の安全ベルトのようなものです。沢では基本歩く事が主体なのと、濡れる事が前提ですのでパットの厚いクライミング用ハーネスは不向きです(使っている方もいます)。購入するならアルパイン、沢用の軽量ハーネスが良いと思います。
(会装備がありますのでレンタル可です)

③安全環付きカラビナ
 ハーネスとロープを連結するのに使用します。
(会装備がありますのでレンタル可です)


④下降器(エイト環、ATCガイドなど)
 通常では降りられない斜面や崖を、ロープを使って降りる際に使用します。
(必要なコースかどうかはリーダーに確認してください)

⑤スリング
 立ち木に自分を固定したり(セルフビレイ)仲間の補助したり、いろいろな場面で使用します。120cmと80cmが1本ずつあると良いです。


(4)その他

①ザック
 普通の山用ザックで良いですが、木の枝に引っかかったりしますので、ポケットや付属品の少ないシンプルなものが良いでしょう。日帰りなら25~30リットル位。

②合羽、ヘッデンなど
 これは沢に限らずどんな山でも必要です。特に合羽は遡行中に着ると寒さを防げます。

③食料、水
 これも通常の登山と替わりません。但し、沢ではあまり水は飲みませんし、水の現地調達も可能なので大量に持つ必要はありません。(きれいな沢ではそのまま飲んでも大丈夫です)

④ザックの防水
 ザックの中身は防水します。厚手の大きなビニール袋(2重)にいれて輪ゴムで縛るのが一番安上がりです。携帯電話や車のキー、財布、ライターなど更に濡れてまずいものは個別にビニール袋に入れましょう。

⑤下山用の靴
 下山は尾根や登山道を使う場合が多いです。フェルト製の靴底の場合、歩き難かったりフェルトの消耗がありますので下山用の靴があったほうが便利です。ハイカットの登山靴は重くてザックを占有しますので、ローカットの運動靴、アプローチシューズなんかが良いでしょう。ラバー製の靴の場合はそのまま履いて下れます。
(靴を履き替える場合は替えの靴下も持ちましょう)

⑥着替え
 下山してもまだ衣服が濡れている場合がありますので着替えを準備しましょう。これは車に置いておきます。また屋外で着替える事になりますので特に女子はそれなりの準備をしておいてください。(着替え用のポンチョなど)

 さあ、これで準備は整いました。新しい世界へ一歩踏み出しましょう。すばらしい体験があなたを待っています(保障します)

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